ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
何かあったのではないかと、不安で動けなくなるのだ。
十四歳。それはロザンナにとって気が重くなる年である。
それはもうすぐ両親が事故を起こすから。両親だけでなくアルベルトにまで負の連鎖が起こるのではと嫌な方に考えが及ぶ。
毎日つけている蝶の髪飾りに触れてから、大きく息を吐き出して唇を引き結ぶ。
立ち向かい乗り越える力を持つために、頑張ってきた。今度こそ大丈夫。きっと大丈夫。
ロザンナは気持ちを切り替えるべくしっかり顔を上げ、試験管立てを棚に戻して部屋をでた。
待合室から賑やかな話し声が聞こえてきて自然と足をそちらに向けると、ゴルドンとリオネル、そして若い男性が立っていた。
患者さんかしらと一瞬間考えたが、男性の表情は溌剌としていてそうは見えない。
今はちょうど患者がいなく休憩中のようだが、朝から診察し通しのゴルドンの方が少しくたびれていて不健康に見えた。
気付いた男性から「ロザンナさん、こんにちは!」声をかけられ、ロザンナも挨拶を返しながら彼らに近づく。
男性は軽装ではあるけれど、腰元には剣が備えられている。
鞘に付いている見覚えのある十字の紋章が入った青色のクリスタルチャームに目を止めて、ロザンナはわずかに首を傾げた。