ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
手のひらがひどく熱い。それに耐えていると、自身にまとわりついていた気味悪い冷たさが徐々に引いていった。
そこまでいけば後少し、自分の持てる全てを彼に注ぎ込むだけ。
ロザンナはゆっくりと目を開け、傷口がしっかりと塞がっているのを確認し、ホッと息をつく。
視線をあげると自分を見ていた男性と目が合い、微笑みかける。
口の覆いが邪魔で表情がわからないものの、苦しげだった呼吸音も止んでいるため、ひとまず危機は脱したと思って良いだろう。
外套の隙間から、腰の右側に短剣を携えているのがちらり見えた。
しかも柄には見覚えのあるクリスタルチャーム。騎士団員の証であるそれを持っているということは、少なくとも目の前にいる男は悪党ではない。
回復した途端襲われる危険はないだろうと考え安堵するが、同時に疑問も浮かぶ。
騎士団員は所属ごとに持っているクリスタルの色が違う。第一騎士団員は赤、第二は青、第三は黄色のはずだが、目の前の彼が所持しているのは紫だ。
自分が知らなかっただけで第四騎士団まであるのか、それとも秘密の組織でもあるのか。一気に興味が沸くも、気軽に聞ける間柄ではない。