ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「ロザンナ、後は俺に任せてくれて構わない。座って休んでいなさい」
「……いえ。私も行きます」
ロザンナは力強く首を横に振って拒否してから、ゴルドンが持つカゴを半ば奪い取る。「案内します」と先頭をきって歩き出した。
夜の帳が落ちた林の中を、ゴルドンが持っているランタンの明かりを頼りに進んでいく。「この辺りから中に」と、記憶を頼りにロザンナは小道を外れ、岩を見つける。
「ここにいたんです。でもそんな……どこにいってしまったのよ」
しかし、岩陰に男の姿はなかった。
一瞬、場所を間違えたかと考えたが、岩のそばには少し前までロザンナが持っていたカゴがポツンと残されているため、やっぱりここで合っている。
すぐさま周囲に視線を巡らせるが暗い中で何かを見つける事はできず、ロザンナは「待っていなさいって言ったのに」と文句がちに呟く。
一方、ゴルドンは岩の傍でしゃがみ込み、頼りない明かりの元で注意深く観察していたが、おもむろに立ち上がり大きく声を発する。
「いるなら痩せ我慢せずに出てきなさい。俺たちは敵じゃない」
暗闇に呼びかけるものの気配すら感じられず、ゴルドンはボリボリと頭をかきながら諦めの息をつく。