ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
それに、訪ねてきたあの騎士団員のようにいまもなお彼を慕っている人は多いのではと考え、ロザンナは失敗したと肩を落とす。



「腕利きの先生だなんて遠回しに言わないで、ゴルドンさんの名前をはっきりと出せば良かった。それならきっと、素直に診療所について行く気にもなったかもしれないのに」


不意に、ゴルドンの足が止まる。それにつられて振り返ったロザンナは、あまり見せない厳しい眼差しに捕らえられ息を詰めた。


「予想通り、その男は私を頼りにやってきたのかもしれません。しかしロザンナさんに治癒してもらってその必要がなくなった。だから、誰かに見つかる前に姿を消したと考えるべきです」


ゴルドンはゆっくりとロザンナに歩み寄り、ほっそりとした肩に両手を乗せる。


「大事なことを言わせてください。私の元にいたら、また運悪く姿を見かけてしまう時もあるかもしれません。でももう決して関わらないでください。知りすぎてしまったら、助けた相手にあなたが命を狙われます。全て私に任せて、距離を置いてください。ロザンナさんに何かあったら、宰相にも王子にも顔向けできませんから」

「……わかりました」


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