ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
今になって振り返ると、確かに考えなしだった。
一歩間違えたら目撃者とみなされ命を奪われていたかもしれないし、今回はたまたま騎士団員だっただけで相手がただのならず者だったら……。
俯き身震いしたロザンナへ、ゴルドンは微笑みかけた。
「しかし、行動は立派ですよ。さすが私の一番弟子です」
「とっても嬉しいですが、一番はリオネルに譲ります。不機嫌になってしまいますから」
ふふふと笑みを交わすと、自然と止まっていた足が動き出す。診療所の前には、話題に上がったリオネルとロザンナを迎えにきたトゥーリの姿があった。
「言ってくれれば俺がロザンナさんを迎えに行ったのに」と膨れっ面のリオネルに、ロザンナとゴルドンは顔を見合わせて笑う。
診療所に入りカゴを片付けた後、ロザンナはリオネルとトゥーリに気づかれないようにしっかり手を洗う。
「そろそろ戻らないとお時間が」と門限を気にするトゥーリに急かされつつ、ゴルドンに軽く挨拶を済ませてから外に待っていた馬車へと乗り込んだ。
座席へと沈むように腰をおろして気怠く息をついたロザンナへと、トゥーリは不満げな顔をする。