ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「とってもお疲れのご様子ですね。……まさか、こき使われていたりなんて。やっぱり私もご一緒させて貰った方が」
「そんな訳ないじゃない。平気よ、まったく疲れてないわ。なんの問題もない」
目を光らせている彼女の前でゴルドンはロザンナに指示を出しにくく、ロザンナ自身も動き辛い。
学ばせてもらいにきているのに迷惑になるのは避けないとと、ゴルドンの所にいる間はひとりで大丈夫だからと必死に説き伏せたのだ。
背筋を伸ばして席に座り直す。
車輪の音だけが響く中、林の中での出来事を思い返して、ロザンナは自分の両手に視線を落とす。
血は綺麗に洗い落とせても、男の鋭い眼差しは記憶から消せそうにない。
込み上げてくるのは怖いという感情ではなく心配。
敵に見つかることなく兵舎に戻れただろうか。ちゃんと診てもらっただろうか。苦しんでいないだろうか。
そこまで考えて、ロザンナはふわっと欠伸をする。
トゥーリと目が合いシャキッとしなくては思うも、眠気に襲われて徐々にまぶたが重くなっていく。
ぼんやりとする意識の中で「もう決して関わらないでください」と言ったゴルドンの顔が浮かび、このまま今日のことを心の奥底に眠らせるべきですかとロザンナは問いかける。