あまやどりの魔法
首を傾げる私に、少しだけ返答を考えて。
みつけたと思われるそれに、誇らしげに、でも悪戯っ子みたいに口角をあげた。
「そうだなー。例えば、あまやどりしたら、たまたま大学のゼミが同じ奴の店で、タダで大好きなシフォンケーキ食べれたとかはどう?
よくない?このハッピー」
日差しが差し込むようにニカッと顔を出した白い歯がまぶしい。
シャッターが閉まっていて外の様子はみえないのに、太陽が覗きはじめたんじゃないかと期待をしてしまうほど。
「さっきのシフォンケーキ、くれるの?
たしか試作品とかではないような感じだったけど、食べても大丈夫なもの?」
お店に出す用のケーキだったりはしないのかな。
ドライヤーをかけてもらう前にした会話を思い出した。
「試作品ではないけど、試作品みたいなものかな?」
「…うん?」
「母さん、今日誕生日でさ」
「え、」
「だから、明日本番の誕生日ケーキ渡せるようにの試作品?」