あまやどりの魔法



「ん?ひみつ」

「それも教えてくれないの」


光がふりそそぐみたいに笑う葉月くんが、あったかくて心地よい。

答えずに笑ってみせた私に、それすらもたのしそうに目を細める。


「じゃ、好きになってもらえるように頑張らなきゃ」


好きになってもらいたいものが私じゃなくて、雨だとわかっていても、まぶしいものを見るような表情があつい。


「といっても、一緒に祝うことくらいしかできないけど」


なんて返したらと戸惑う私に、カウンターの奥から、ちょいちょいと手招きする葉月くん。

呼ばれて近づいて後ろに立つと、本体だけだったシフォンケーキに寄り添うように、紅茶のクリームが添えられいる。


「水無月さんって下の名前なんていうの?」

「え、紫(ゆかり)だけど…」


なんで急に名前?と思ったけれど、口の端をあげながらチョコペンを手に取った姿に、何をしようとしてるか予測がついた。


「ゆかりってもしかして紫って書く?紫陽花の」

「そうだけど…」


だけど、名前を聞いて手を止めた姿には、予測ができなくて首を傾げる。


「なんだそれ、運命?」


おまけにまた勘違いさせるようなことを平気でいうから、私は口を尖らせる。

そういうこと口にするの、もう少し気をつけた方がいいと思う。


ただでさえ太陽は、みんなの光なんだ。


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