あまやどりの魔法
私の心配をよそに、笑う葉月くんの光は強すぎる。
影に目が行きがちな私には、それくらいの眩しさがいい。迷わずに、見失わずにいられる気も、し始めてはいるのだけど。
「俺の母さん、はるか。紫陽花の後ろをとって陽花って言うんだ。すごくない?」
"絶対に紫ちゃんと母さん運命!" と嬉しそうに目尻を下げる葉月くんに困ってしまう気持ちも本当。
葉月くんのお母さんと運命といわれても、どうしたらいいの私。
「…そういう葉月くんはなんていうの?下の名前」
正解がわからなくて、私も聞いた。
出会って20分30分の間柄。
私にとっては短く思えるほど濃厚な時間だったとしても、まだ何にも知らない。
葉月くんのこと。名前すらも。
「俺?俺はこうだよ。虹って書いて、こう。
いい名前でしょ?」
単色では表現し切れないその笑顔に、くやしいほどによく似合っている名前。
これから雨上がりの空に虹をみつけたら、きっと葉月くんのことを思い浮かべてしまう気がした。
「ずるいくらいにね」
「ん?」
「こっちの話」