あまやどりの魔法
ベールのように空を彩る虹は、何度みてもやっぱりキレイで、見惚れたくなる。
だけど今は。
「雨だから出会えるしあわせとして、ど?」
虹以上のしあわせをまとった葉月くんから、目を離せない。
全身からうれしいがあふれでていて、眩しいほどの純粋な気持ちに目を細めた。
「虹より輝いてどうするの」
「へ?」
くすくすと笑う私の気持ちを、きっと葉月くんはわからないだろうけど。
「ううん、なんでもない!ただ、ありがとうね」
雨の日に、こんなに幸せな気持ちでいられたのは、葉月くんのおかげだよ。
予報通りにいかなかった夕立が、私にあまやどりをさせて、葉月くんに出会わせた。
葉月くんに出会わなければ、
重苦しい憂鬱のなかにも、光にあふれた世界が待っていてくれるだなんて、知らずに一生、雨を疎ましく思い続けただろう。
そんな雨模様の時間を、やさしい時間に変えてくれた。
…だから、ありがとう。
「…紫ちゃんってさ、笑うと紫陽花になるよね」