あまやどりの魔法
「この茶葉、さっきのケーキにも使ってる?」
「お、正解!意外と料理するんだ水無月さん」
「意外とってなに。そのまた意外で全くしないよ。紅茶がすきなだけ」
ドライヤーを弱にして聞いてくれていた葉月くんは、紅茶がすきなだけといった私に “いいね” と、嬉しそうに白い歯をのぞかせて、またドライヤーの熱を強めた。
…思いのほか、今日の雨に憂鬱さを感じていないのは、太陽みたいな葉月くんのおかげかもしれない。
いつもは家にいても聞こえる雨の音や、じめっとした空気に顔をしかめるのに、葉月くんがいるこの場所は、雨にも捕まらず穏やかだ。
「あまやどりにとたどり着いた場所が、葉月くんの家でよかったかも」
「ん?」
私が呟くと、結局またドライヤーの威力を落としてくれた葉月くんが、背後からひょっこり顔を出す。
すぐ傍で、きょとんとしているところをみると、今言ったことは聞こえなかったみたい。
別にもう一度いうことでもないかなと、首を横にふって笑う。
「葉月くんは、雨も好きそうだよね」