あまやどりの魔法



恵みの雨は、しあわせになるための雨。

であるならば、誰も憂鬱にさせることなく降ってほしい。


私達が寝てる間…気づかないうちに地球をうるおしてくれたら、あとは晴れやかな気持ちが続くだけ。

そしたら恵みの雨も、ただ感謝されるだけでいい。それだけでいられたのに。



「え、それはヤダ。大いにイヤ」


みえない窓の外を眺めていた私の話を不思議そうに聞いていた葉月くんが、力強く腕をつかんできた。


びっくりしてタレ目をみると、かなり真剣。

タレ目なのにタレ目じゃなくなるくらいに。



「…もしかして雨に濡れたい系男子?」

「…ちょっ、どんな系男子それ」


半分冗談。半分真剣に聞いてみると、葉月くんの顔がくしゃってなった。

あまりにもケラケラと笑うから、なんだか恥ずかしくなってくる。


…だって。雨に濡れたい以外に、起きてるうちに雨に振られたい理由ってある?


控えめに唇を尖らせた私に、葉月くんは目を細める。



「虹だよ、虹!

ただでさえ中々みれないのに、寝てる間に雨降ってたら虹になれないでしょ」



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