あまやどりの魔法
雨上がりの空みたいに笑うから、途端に返す言葉を失った。
虹がうまれるには雨と太陽が必要で、朝や夕方が叶いやすいと聞いたことがある。
葉月くんが言った "虹になれない" とは、このことだと思う。
「それにさ、雨があがれば、晴れの日も特別だって思えるし、梅雨が明けたら夏がくる。
雨は幸せの前触れだと思わない?」
「…しあわせの前触れ」
「そうそう!」
「それって結局、雨自体のことはすきじゃないってこと?」
雨が降るたびに思っていた。
”恵の雨だから“ と言いたがる人は、
意外と私と感性が近いんじゃないかって。
雨が憂鬱だから、それを必要なものと言い聞かせて上を向くんだと。そんな風に。
「うん?んー、幸せがノックしてる最中だって思うからワクワクするよ?そう考えたらよく思えてこない?雨のことも」
でも葉月くんは、憂鬱をかき消すための言い聞かせではなく、雨そのものをステキに変える魅力をみてた。
「あとは、雨だから出会える幸せとかもあったりするよ?」
「雨だから出会える幸せ?」