ヒミツの恋をはじめよう
自宅のドアを開いた瞬間、これまでの緊張が一気に解けたのか、持っていた鞄が手から落ちた。心なしか膝も笑っているような気がする。
ようやくの思いでリビングへと辿り着き、ソファに身を投げる。
(つ、つかれた・・・!)
天井を見つめ、ふうと一息つく。車から下りる際に難波さんが何かを叫んでいたが、振り切るようにして去ってしまったことを少し後悔する。
(でも、一回きりっていう約束だったからこれでいいのよ)
足に力を入れて立ち上がり、風呂場へと向かう。気持ちも汗もさっぱり洗い流そうと、熱いシャワーを浴び、リフレッシュする。
何もかもを洗い流してからリビングへ戻ると、次第に眠気に襲われ、私はそのまま夢の世界へと旅立った。
外からドンドンという音が聞こえ、目を覚ます。
一体、どのくらいの間眠っていたのだろうかと腕時計を確認すると、時刻は八時を指していた。
(二時間も寝てた)
お腹の奥が震えるような音の正体を確認する為にベランダから外へ出ると、空に花火が上がっていた。
「わあ・・・」
そういえば、隣町で花火大会が開催されるとポスターを目にした気がする。
夜空に輝く花々を見上げていると“ぐう”と腹の虫が鳴き出した。
彼に誘われた時点では、お昼に食べた蕎麦がまだお腹に残っていたが、時間が経過すると共に消化され、私は空腹状態に陥った。
(何か買いに行こう)
髪も乾かさずに寝てしまった為、髪はぼさぼさになっており、化粧もしていない。
(まあいっか)
家から徒歩数分の距離で誰に会うこともないと思い、髪は一つに結んで仕事用の眼鏡をかけ、ジャージ姿のままで家を出た。
風に乗ってきた火薬の匂いを感じながら歩いていると、道中には浴衣姿で歩いているカップルや家族連れがおり、花火と共に今年も夏が訪れたのだと実感する。
いつも通っているコンビニへと到着し、商品を物色する。
花火大会が終わるまで、あと一時間余り。家から見られるせっかくの機会である為、一人花火見物をしようと思い、ビールや焼き鳥、フライドポテト等、屋台で売られているような品を選びレジへと向かった。
買い物を終え、店の外から出ると、ひと際大きな花火が上がっており目を奪われる。
「おっきいな」
空を見上げながら独り言を漏らしたつもりが、「本当に大きいですね」と私より後に店から出てきた人が反応を示す。
私は誰かも確認せず、女の寂しい独り言に乗ってきてくれたのだと、視線は花火に釘付けのままで言葉を返す。
「ここまで大きな花火は久しぶりに見ました」
「この花火大会の目玉だそうですよ」
「なるほど」
それならばと思い、煌めく花火を目に焼きつけようと立ち止まって空を見上げる。話し掛けてきた彼もその場で足を止めており、しばし二人並んで夜空を眺めた。
花火が終わると、私たちと同じように足を止めていた人が動き始めた。私もその流れに乗ろうと一歩足を踏み出したところで呼び止められる。
「もしよかったら、もう少し一緒に花火を見ませんか?」
振り返って声の先を確かめると、隣に立っていたのは帽子の彼であり、いつも目で追っていた人からの誘いに胸が高鳴る。
頭で考えるより先に首肯してしまい、彼からの提案で近くの公園へ場所を移すことにした。
公園のベンチに座ると再び花火が始まり、特に会話することもなく二人で花火を眺めるだけの時間が流れた。
ようやくの思いでリビングへと辿り着き、ソファに身を投げる。
(つ、つかれた・・・!)
天井を見つめ、ふうと一息つく。車から下りる際に難波さんが何かを叫んでいたが、振り切るようにして去ってしまったことを少し後悔する。
(でも、一回きりっていう約束だったからこれでいいのよ)
足に力を入れて立ち上がり、風呂場へと向かう。気持ちも汗もさっぱり洗い流そうと、熱いシャワーを浴び、リフレッシュする。
何もかもを洗い流してからリビングへ戻ると、次第に眠気に襲われ、私はそのまま夢の世界へと旅立った。
外からドンドンという音が聞こえ、目を覚ます。
一体、どのくらいの間眠っていたのだろうかと腕時計を確認すると、時刻は八時を指していた。
(二時間も寝てた)
お腹の奥が震えるような音の正体を確認する為にベランダから外へ出ると、空に花火が上がっていた。
「わあ・・・」
そういえば、隣町で花火大会が開催されるとポスターを目にした気がする。
夜空に輝く花々を見上げていると“ぐう”と腹の虫が鳴き出した。
彼に誘われた時点では、お昼に食べた蕎麦がまだお腹に残っていたが、時間が経過すると共に消化され、私は空腹状態に陥った。
(何か買いに行こう)
髪も乾かさずに寝てしまった為、髪はぼさぼさになっており、化粧もしていない。
(まあいっか)
家から徒歩数分の距離で誰に会うこともないと思い、髪は一つに結んで仕事用の眼鏡をかけ、ジャージ姿のままで家を出た。
風に乗ってきた火薬の匂いを感じながら歩いていると、道中には浴衣姿で歩いているカップルや家族連れがおり、花火と共に今年も夏が訪れたのだと実感する。
いつも通っているコンビニへと到着し、商品を物色する。
花火大会が終わるまで、あと一時間余り。家から見られるせっかくの機会である為、一人花火見物をしようと思い、ビールや焼き鳥、フライドポテト等、屋台で売られているような品を選びレジへと向かった。
買い物を終え、店の外から出ると、ひと際大きな花火が上がっており目を奪われる。
「おっきいな」
空を見上げながら独り言を漏らしたつもりが、「本当に大きいですね」と私より後に店から出てきた人が反応を示す。
私は誰かも確認せず、女の寂しい独り言に乗ってきてくれたのだと、視線は花火に釘付けのままで言葉を返す。
「ここまで大きな花火は久しぶりに見ました」
「この花火大会の目玉だそうですよ」
「なるほど」
それならばと思い、煌めく花火を目に焼きつけようと立ち止まって空を見上げる。話し掛けてきた彼もその場で足を止めており、しばし二人並んで夜空を眺めた。
花火が終わると、私たちと同じように足を止めていた人が動き始めた。私もその流れに乗ろうと一歩足を踏み出したところで呼び止められる。
「もしよかったら、もう少し一緒に花火を見ませんか?」
振り返って声の先を確かめると、隣に立っていたのは帽子の彼であり、いつも目で追っていた人からの誘いに胸が高鳴る。
頭で考えるより先に首肯してしまい、彼からの提案で近くの公園へ場所を移すことにした。
公園のベンチに座ると再び花火が始まり、特に会話することもなく二人で花火を眺めるだけの時間が流れた。