世界の鍵を握るは無頓着すぎガール?!
prologue
人生とは、退屈である。

どこかの偉人がそう言っていた。
私もそれに激しく同意する。

全てが退屈ではない。
と言うより、退屈と表すのは少し間違っているのかもしれない。


_____興味が、無い。

道行くあの人も、クラスで騒ぐその子も、自分の親ですら。

他人の人生に関与し、自分の存在が他人に影響を与え、左右し、左右される。
そんなオママゴトみたいな関係に興味が無い。

と、冒頭から中々に嫌味な事を言ってしまったが全てがそれに当てはまる訳でもないと言っておこう。

そう、今まさにその例外が起こったのだ。




「…【危険種】。」


数分前のニュースで繰り返し報道されていたこの言葉。

『世界的に存在を隠蔽されていた【危険種】と呼ばれる生物…いや、怪物が施設から脱走し、世界各地へ移動中です!
建物の中に避難してください!』


教科書にも、参考書にも、どの論文にも載っていない【危険種】という単語。
それは私の興味を引くに充分すぎるものだった。

自慢じゃないが、小さい頃から本や書物を読むことが好きだった私は、いつしか近所の図書館にある本は全て読破、さらにはネットに掲載されている論文などなど興味を惹かれるもの全ては読み切り、理解していた。

何度も繰り返される人生に、数え切れない人間の価値観、そしてその物事を理論的に解析する研究。

そう、本の中は無限大なのだ。


私の中にはたくさんの人間(とうじょうじんぶつ)の記憶や、価値観、考え方が常に眠っている。

それは本を嗜む人間ならば誰でも感じることだろう。

しかしそのせいか、他人に対して興味を抱くことが無くなっていた。
だってあの子もその子も、みんなつまらない単調な人生、価値観なんだから。

本にする価値もない、そんな無価値な人生。


まあだから別にここで死んじゃってもそれは運命だし、未練もないしいいかな、なんて考えながら人の波に逆らう。

報道を見た人達はみんな建物の中に我先にと移動を始める。
その光景はまるで砂糖に群がる蟻。

建物から溢れた人間たちが取っ組み合いを始め、それを傍観するその他の人間。

「私、関係ないから。」

なんてセリフがあちらこちらから聞こえてきそうな場面である。

日本人ってこういう所が他人主義貫いてるって言うか、一周まわって清々しいっていうか。


…危険種が御来場する前にご臨終しそうな人もちらほらいる。

なんて呑気に周りを見渡してみれば、普段は人の溢れたスクランブル交差点も、私一人。

人の視線を感じながら路地裏へと歩を進める。

だって建物は人が沢山いて入れそうにないんだもの。

どうせ危険な目にあうなら【危険種】なるものこの目に収めて…


なんて考えがよぎった時、私の頭上を何かが横切った。

よく目を凝らせば、人の形をした鳥…?
鳥、というか聖書でよく見る天使にそっくり。
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