時の止まった世界で君は
「……おっしゃる、通りです。すいません。」

不貞腐れるでも、怯えるでもなく、しっかりと芯を持った声で答える姿に、俺は、何故宏樹がこいつを気に入っているか、少しわかった気がした。

「……わかったならいい。……新人は、まだまだ足りない所しかないんだから、もっと見て学べ。」

「はい」

「……あと、怯えた態度はすんな。子どもには、そういうの、すぐ伝わる。」

「はい…」

悔しそうな表情を滲ませつつも、素直に返事をするその姿は、どこか、昔の宏樹を彷彿とさせた。

師弟、似たもの同士ってか……

「……返事だけでおわんなよ。」

少しだけ、期待してやる。

……なんて、口が裂けても言わないけど、こいつがこれからどう成長するか、前よりは興味が湧くようになった。
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