時の止まった世界で君は
数日後、検査結果が出た。
結果は、案の定陽性。
この前のは検査入院だったから、一度退院しているなつをまた病院に呼んで説明しなければならない。
俺は、ひどく憂鬱だった。
またなつに辛い治療を受けさせなければいけない。
しかも、腫瘍は脳内の主要な血管に被さっている。
…つまり、手術での腫瘍の全摘出は難しい。
一部を残して摘出したあと、化学療法で腫瘍を潰すしかないか……
「はあ……」
思わずため息が出た。
いつになったらなつはこの病院から解放されるのだろう。
もう15年だぞ……
その間ずっと、なつは病気と戦い続けてきた。
退院している間だって、毎日沢山薬を飲んで定期的に検査を受けに来て…
そこで異常が見つかれば、はいまた入院。
正直、辛かった。
俺がなにか辛い目にあっている訳じゃないのに…苦しんでいるなつを見ていることがただただ辛かった。
俺はまた、なつを元気にさせてあげることが出来るのだろうか。
……正直自信がなかった。
年々、なつと接する時間が増えていく度、心が揺らいでしまう。
なつの前で冷静を保てなくなってしまう自分がいる。
いつ何時も冷静かつ正確な判断を下さないといけないのに…
どうしても情を注いでしまう。
俺は迷っていた。
このまま、なつの主治医を続けるべきなのか。
なつを一番近くで励ましてあげられることを考えると主治医は降りたくなかった。
……でも、俺が冷静な判断を失ってしまった時を考えると、なつには別の先生が主治医を務めた方がいい気がした。
色々な思いが脳内を駆け巡って頭がぐちゃぐちゃだった。