時の止まった世界で君は
「えー、今日からうちで2ヶ月間研修をする瀬川くんです。瀬川くん、あいさつ」
「はい。瀬川星翔です。2ヶ月間と短い間ですが、精一杯学ばせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。」
パラパラと拍手が聞こえる。
医局の先生方は慣れてるのか、さほど興味のない様子だ。
「てことで、みんな色々教えてあげてください。指導医は…染谷でいいか。染谷、よろしく頼む。」
「俺ですか?…はあ、わかりました。」
染谷と呼ばれた男の先生が立ち上がる。
「瀬川くんは、染谷について回るように。」
「はい」
小児科部長にそう言われ、俺は染谷先生の元へ小走りで駆け寄る。
とても背の高い先生だ。
俺が174だから…多分、180は余裕で超えている。
「瀬川星翔です。2ヶ月間よろしくお願いします。」
「おう。俺は染谷宏樹。主に、小児ガンの子を専門に治療してる。2ヶ月間、だいぶハードだと思うけど頑張れよ。よろしく。」
励ますように、俺の背中を叩いた手はとても大きい。
「んじゃ、早速だけど回診行くから着いてきて。」
「はい」
そう言って緊張感と憧れの場所に立った高揚感を持ちながら先生を追いかけた。