時の止まった世界で君は
なつは、それを見るとゆっくりと体を起こして、浮かない顔のままフォークを手に取った。

「いただきます。」

「……いただきます…」

俺はなつの様子を伺いながら、サンドイッチの包み紙を破っていく。

なつは、やっぱり少し暗い表情のままご飯を食べていく。

目元が赤いのを見ると、きっと午前中は泣いたんだろう。

それがこの表情の原因なのか、もしくは…

「……なつ、具合悪い?」

そう聞くと、なつはご飯を食べていた手を止める。

そして、しばらく様子を見て待っていると、なつはじわじわと目元に涙をうかべた。

「どうした、どうした。」

「グスッ…ヒック……」

図星かな……

ゆっくり背中を撫でて、ハンカチを渡す。

「無理しないでって言ったよね。」

……コクン

「…どうして、また我慢しちゃうかな」

……コクン

我慢してしまうのは、なつの良いとこでもあるけど、悪いとこでもある。

…長年の入院生活や治療がそうさせてしまったのかもしれない。

そう思うと、申し訳ないと同時に切なくなる。

「どこ具合悪い?吐きそう?頭痛い?」

そう言うと、なつはグスグスと鼻をすすりながら首を横に振る。

「…どっちも……」

声が震えていた。

「……そっか。両方か。…ごめんな、すぐ気付いてあげられなくて。辛かったしょ。」

コクン

副作用だろうな。

吐き気止め入ってても、やっぱり辛いか…
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