時の止まった世界で君は
「起きてるのしんどかったら、1回寝ようか?その方が楽?」

そう聞くと、なつは小さく頷いて俺に抱っこを求めるように手を広げた。

「…ごめんな、辛い思いさせちゃって。」

抱きしめたなつからは熱い体温が伝わってくる。

言葉に上手くできないだけで、本当は体全体がしんどいのかもしれない。

「なつ、お熱ありそうだから熱計ろうね。」

俺に抱きついたままのなつの脇に体温計を挟む。

少しして体温計が鳴り表示を見ると38.6の文字。

「やっぱり熱あるか…。」

体がしんどいなら解熱剤を入れてあげたいけど、あまり薬に頼りすぎるのもさせたくない。

とりあえず、冷えピタだけ貰ってあとは瀬川に連絡して判断を仰ごう。

俺の主観が入った判断はやっぱり、よくないから。

なつは動いてくれそうもないので、ナースコールで看護師さんに冷えピタをお願いし、PHSで瀬川に連絡を入れる。

ご飯は食べれそうにないかな…

テーブルを退かして、未だ俺に抱きついたままのなつに布団をかけてやる。

数分して、看護師さんが来ると、冷えピタをくれて代わりにご飯を下げてくれた。

「なつ、冷えピタ貼ろうか。そしたら、ちょっとしんどいの楽になるからね。」

小さく頷いたのを確認して、汗をかいている額を拭ってから貼ってあげる。

冷たさに驚いたのか、少しピクっとした様子のなつだったが、すぐに気持ちよさそうに目を閉じた。
< 45 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop