時の止まった世界で君は
PHSに連絡を入れてから数分して、病室のドアがノックされた。

「はい。」

「あ、瀬川です。入りますね。」

カーテンをくぐって瀬川が顔を出す。

「お疲れ様。急に連絡入れちゃってごめんな。なつ、辛そうでさ。」

そう言うと、瀬川は頷いてなつの様子を見るためにベッドサイドに寄る。

「…急に下げなきゃいけないほどの熱ではないですけど、辛そうなら解熱剤入れた方がいいですかね……。でも、今寝れてるなら、解熱剤入れるためにわざわざ起こしちゃうのもあれなので、少し様子見ですかね。」

俺もその意見で概ね合意だった。

瀬川が来るまでの間、冷えピタで少し楽になったのか、それとも疲れてしまったのか、なつは俺によしかかったまま眠ってしまっていた。

「そうだな。俺もそれがいいと思う。今は辛いだろうから寝れる時に寝ちゃった方がいいもんな。」

「そうですね。…まだ、しばらくしんどいと思うんで、俺もちょくちょく様子見に来るようにしておきます。どうしてもしんどそうだった時、先生に連絡入れた方がいいですか?」

「……うん。それで頼む。グズってどうしようもない時とかも遠慮なく呼んでくれていいから。」

そう言うと、瀬川は苦笑いをしてなつの頭を撫でた。

「…今が踏ん張り時だから。……もう少し、頑張ろうな。」
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