時の止まった世界で君は
その晩は、俺の経験上一番か二番を争う忙しさだった。

「先生、こっちお願いします!」

「はいっ」

ちょうどインフルエンザやノロウイルスの季節ということもあり、子どもの高熱や嘔吐などの症状で患者がごった返していた。

ここは地域の夜間救急のある大きめの病院なので、夜に症状が悪化した子どもを焦って連れてくる親御さんがとても多い。

おまけに、通常の急患も普通にいるもんだからまあ大変だ。

今日は夜間救急の当番ではなかったものの、やはり子どもの急患となると小児科の当直の先生が呼び出されるから、昼に負けない忙しさでずっと走り回っていた。

もう既に診断がついていて症状が悪化して来た患者さんには症状を和らげる薬や点滴の指示をし、まだ未受診の患者さんは検査にかけて…

「先生、7分後3歳男児、喉つまりです。」

「了解。スコープ用意しておいて。」

「はいっ」

まじか…

この忙しさの中で喉詰まりとなると、そっちに時間を取られてしまう。

でも、喉詰まりは窒息からすぐに命の問題に直結するから後回しにできない。

その間に、他の患者さんを長い間待たせてしまわないといけないのは心苦しいが、それが精一杯だ。

一度呼吸を整えて、気合いを入れ直す。

よし、もうひと頑張り…
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