時の止まった世界で君は

幡也side

コンコンッ

「なつー、どうしたー?」

今日は特にずっと見ていなきゃいけないほど悪い容態の子もおらず、暇していた時に、急にPHSが鳴って呼び出された。

なつが泣き続けていて、過呼吸から呼吸困難に陥りかねないって。

相手は、瀬川?だっけ、新しいなつの主治医が今手離せないからとのこと。

行ってみると、確かに廊下まで泣き声が聞こえてくる。

病室に入ると、困った様子の看護師が必死になつの背中を撫でていた。

声をかけても、気付いてないのかなつは泣いたまま。

仕方なく、なつを抱き上げる。

「どうした、なつ。そんなに泣いて。嫌な夢でも見た?」

そう言うと、やっと気付いたのか、なつはしゃくりを上げながら俺の名前を呼ぶ。

「…ヒック、はー、くん、ヒック……グスッ…」

「うん、久しぶり。なつがずっと泣いてるって言うから、びっくりして来ちゃった。」

そう言うと、まだ気が収まってなかったのか、なつはまた思い出したように泣き出す。

「どうした?ずっと泣いてたら苦しくなっちゃうよ。」

そう言いながら背中を撫でるも、なつが落ち着く様子はない。

体の熱さからして、熱があるのかな。

熱のせいで、機嫌が悪いのもあるのかも。

「よしよし、一旦苦しいからゆっくり呼吸してみような。俺の声聞いて。ゆっくり一緒に息するよ。」

背中をリズム良く叩きながら、呼吸を促す。

少しすると、過呼吸に陥っていたのが徐々に回復してくる。

「上手だよ。もう少しゆっくり息しような。」

過呼吸が収まってくるのと同時に、徐々に泣き止んでくる。

数分すると、完全に落ち着いて、少し鼻をすするくらいになっていた。
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