時の止まった世界で君は

星翔side

「瀬川っ」

「は、はいっ!」

午前中に入っていた手術の見学を終え、少し遅めのお昼ご飯を食べていた時、急に染谷先生が走って医局に入ってきた。

「すぐになつのCTとMRIとってくれ。すぐに。」

「えっ?」

急な話で頭が混乱する。

CTとMRI?なつが?なんで?腫瘍のことを確認するなら、今度の抗がん剤終わったタイミングですれば良くないか?

様々な疑問が頭に浮かぶ

「事情説明は後、とりあえず見せた方が早いからなつの病室に来てくれ。」

「あ、は、はいっ」

あまりにも急で、状況も理解できないまま俺は染谷先生のあとを追いかけて医局を出た。











病室に着くと、なつは具合は悪そうでいるものの、概ねいつも通りベッドに横になっていた。

「なつ、ごめんな、ちょっとさっきみたいに歩いてくれる?」

なつはキョトンとしながらも、染谷先生の指示に従い病室の端からこちら側へ歩き出す。



それを見て、俺は染谷先生が何を言わんとしてるのか、すぐに理解した。

「…………ここまで、歩行障害、強く出ていましたっけ…」

「そうなんだよ。たった数日でここまで悪くなるなんて変だろ?」

簡単に言うと、なつの足取りが覚束無いのだ。

確かし具合が悪くて多少フラフラしてしまうのはわかる、でもそれとは違う明らかに変な歩き方をしている。

考えられるのは…

「腫瘍による続発性の水頭症……」

そう言うと染谷先生は大きく頷いた。

「すぐに検査室取ってきます。」
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