時の止まった世界で君は
コンコンッ

「なつ、入るよ」

そう声をかけてから病室に入る。

後ろには染谷先生も一緒だ。

部屋に入ると、なつはまた身体を縮こませて辛さに耐えているようだった。

「なつ、しんどい時にごめんね、ちょっとお話あるんだけどいいかな?」

そう聞くとなつは小さく頷く。

「ありがとう。」

ベッド横の椅子に座ってさっきの検査結果とMRIの画像を印刷したものを取り出す。

「これ、さっきの検査のお写真ね。ここ、ちょっと隙間空いちゃってるのわかる?」

こくん

「うん、今ねなつが具合悪いのこれのせいなんだ。頭にお水が溜まっちゃってるの、それで頭痛くなっちゃったり、オエッて感じしたりするの。」

なつは無言で俺の持つ資料をボーッと眺めている。

「ずっと具合悪いのはしんどいよね、だからね、このお水、チューブ使って抜かなきゃいけないの。」

そう言うと、なつは不安げに俺の顔を見上げた

「…………しゅじゅつ…?」

俺はとても驚いた。

なつから、そんな言葉が出るなんて…

確かに、手術だ。

…でも、医療者じゃないなつからこの言葉が出るってことは……きっと、経験則…だよね……

「うん。そう。手術しなきゃいけないの。だから、なつ頑張れる?」

なつは少し考えたあと、俺の後ろで立っている染谷先生の方を見た。

「……大丈夫だよ、いつもみたいに寝てたらすぐに終わるからね。」

"いつも"その言葉が俺には重くのしかかった。

なつは染谷先生の言葉を聞くと、また小さく頷いた。

「…なつ、がんばる。……はやく、なおして、ひろくんとおそと、いく。」

「……うん!えらいね。はやく、外行きたいもんね。じゃあ、頑張ろうな。」

そう言ってなつの頭を撫でた時、なぜか泣きそうになってしまって、俺はグッと涙を堪えた。

小さななつの頑張りが痛いほど感じられた。
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