時の止まった世界で君は
「……ひろくん、だっこ…」
なつが小さくそう呟いたのは、施設の方が部屋を出てすぐだった。
「ん?どうした。まだ手術終わってすぐだから抱っこは出来ないけど、手繋ぐので我慢出来る?」
……コクン
「うん。じゃあ手繋ごうね。どうした?何かあった?」
何があったか、なつが何に怯えているから明白だったが、もしこれが俺の決めつけなら良くないし、なつの口からもきちんと今の気持ちを話して欲しかった。
「…………こわかった…」
「…そっか。どうして、怖かった?」
そう聞くと、なつは考えるように少し俯いた。
「………せんせい……こわい。」
「先生が怖かったんだね。…どうして、その先生怖い?施設で何かあった?」
施設と聞いて、なつはピクリと反応した。
そして、じわじわと大きな目に涙を浮かべると、さっきよりも強く俺の手を握った。
「……なつ、いっぱい、おこられる…。でも、なつ……おこられるの、わかんない……。なつ、こわい……、おこられるの…………こわい……。」
なつの言う"怒られる"がどこまでを指すかはわからないけど、話を聞く限りなつはなんで怒られているのかわからず、でも沢山怒られてそれを恐れているようだ。
「…怒られる時さ、なんて言われる?あと、どんなときに怒られる?」
「…………なつ、あそんでたらね……なつ、だめって。なつは、おねえさんだから、あそんじゃだめって。……みんな、あそんでるのに、なつだけだめって…………」
あー、なるほど……
なつはまだ自分が小さい子と変わりないと思っているんだな。
だから、小さい子に混じってあそびたい。
…でも、施設の方からしたら、体格差のあるなつが小さい子に混ざって遊ぶのは危ないと考えるのかもしれない。
……また、いくら、なつの心が幼いと説明しても、俺らみたいにずっとそばにいる訳ではないだろうから、どの程度の幼さなのか把握しきれていないのもあるかもしれない。
でもまあ、とりあえず、なつは小さい子と一緒に遊びたいが施設側は許してくれなくて、それでも遊ぼうとするなつを叱る。
なつは、自分がなんで小さい子と遊べないのかが理解できないから、無意味に怒られていると感じて怯えてしまう。
「…なつ、いっつも、ひとり。………おへやで、ひとりであそんでなさいって。……なつ、みんなとあそびたいのに…、なつも、あそびたいのに……」
ああ、なつはそこで孤独も感じていたのかな。
仲間外れにされていると疎外感を感じ、それもまた、なつが嫌がる理由なのかもしれない。
なつの言葉からその情景が頭に浮かび、胸がキュッと締め付けられる。
なつは、施設に入ってからずっとこんな孤独感と疎外感を感じていたのか?
大人でさえ、長い間孤独と疎外に耐えるのは辛いだろう。
それを、こんなに幼いなつが…、しかも自分ではそんな目にあう理由も分からずに……
「……ひろくん、ひろくんはなつのこと、すき?」
涙目のなつに見つめられ俺は即座に頷きを返した。
「大好きだよ。なつのこと、大好き。……ごめんね、施設でずっと…寂しい思いしてたんだね。」
布団越しに俺が抱きしめると、なつはより一層涙を流した。
「大丈夫だよ。なつがここにいる限り、なつには俺も、幡也も、瀬川先生もいるからね。みーんな、なつの味方。みーんな、なつのこと、大好きだから。」
そう言っているうちに俺の中で何かが込み上げてきて、俺は大人気なく涙を流した。
涙はなつに悟られないようにそっと袖で拭っておいた。
なつが小さくそう呟いたのは、施設の方が部屋を出てすぐだった。
「ん?どうした。まだ手術終わってすぐだから抱っこは出来ないけど、手繋ぐので我慢出来る?」
……コクン
「うん。じゃあ手繋ごうね。どうした?何かあった?」
何があったか、なつが何に怯えているから明白だったが、もしこれが俺の決めつけなら良くないし、なつの口からもきちんと今の気持ちを話して欲しかった。
「…………こわかった…」
「…そっか。どうして、怖かった?」
そう聞くと、なつは考えるように少し俯いた。
「………せんせい……こわい。」
「先生が怖かったんだね。…どうして、その先生怖い?施設で何かあった?」
施設と聞いて、なつはピクリと反応した。
そして、じわじわと大きな目に涙を浮かべると、さっきよりも強く俺の手を握った。
「……なつ、いっぱい、おこられる…。でも、なつ……おこられるの、わかんない……。なつ、こわい……、おこられるの…………こわい……。」
なつの言う"怒られる"がどこまでを指すかはわからないけど、話を聞く限りなつはなんで怒られているのかわからず、でも沢山怒られてそれを恐れているようだ。
「…怒られる時さ、なんて言われる?あと、どんなときに怒られる?」
「…………なつ、あそんでたらね……なつ、だめって。なつは、おねえさんだから、あそんじゃだめって。……みんな、あそんでるのに、なつだけだめって…………」
あー、なるほど……
なつはまだ自分が小さい子と変わりないと思っているんだな。
だから、小さい子に混じってあそびたい。
…でも、施設の方からしたら、体格差のあるなつが小さい子に混ざって遊ぶのは危ないと考えるのかもしれない。
……また、いくら、なつの心が幼いと説明しても、俺らみたいにずっとそばにいる訳ではないだろうから、どの程度の幼さなのか把握しきれていないのもあるかもしれない。
でもまあ、とりあえず、なつは小さい子と一緒に遊びたいが施設側は許してくれなくて、それでも遊ぼうとするなつを叱る。
なつは、自分がなんで小さい子と遊べないのかが理解できないから、無意味に怒られていると感じて怯えてしまう。
「…なつ、いっつも、ひとり。………おへやで、ひとりであそんでなさいって。……なつ、みんなとあそびたいのに…、なつも、あそびたいのに……」
ああ、なつはそこで孤独も感じていたのかな。
仲間外れにされていると疎外感を感じ、それもまた、なつが嫌がる理由なのかもしれない。
なつの言葉からその情景が頭に浮かび、胸がキュッと締め付けられる。
なつは、施設に入ってからずっとこんな孤独感と疎外感を感じていたのか?
大人でさえ、長い間孤独と疎外に耐えるのは辛いだろう。
それを、こんなに幼いなつが…、しかも自分ではそんな目にあう理由も分からずに……
「……ひろくん、ひろくんはなつのこと、すき?」
涙目のなつに見つめられ俺は即座に頷きを返した。
「大好きだよ。なつのこと、大好き。……ごめんね、施設でずっと…寂しい思いしてたんだね。」
布団越しに俺が抱きしめると、なつはより一層涙を流した。
「大丈夫だよ。なつがここにいる限り、なつには俺も、幡也も、瀬川先生もいるからね。みーんな、なつの味方。みーんな、なつのこと、大好きだから。」
そう言っているうちに俺の中で何かが込み上げてきて、俺は大人気なく涙を流した。
涙はなつに悟られないようにそっと袖で拭っておいた。