時の止まった世界で君は
「やー-だー-おそといくのー--!!!」

「まだ駄目だよ。なつお熱あるでしょ?お熱ある人はお外はいけないよ。」

「やー-だー---!!やだやだやだ!!なつおそといくの!おねつない!!!」

今日は、本来ならなつの外出を予定していた日。

しかし、昨夜から熱を出していたなつの外出は、当然ながら延期になった。

それで昨日からなつはずっとご機嫌斜め。

まあ、この前から楽しみにしていた外出だったから残念なのはわかる。

でも、朝からずっとこんな様子で、少しまいってしまう。

しかも、今日は休みの予定だった染谷先生も急患に呼び出され不在。

それでなつの不機嫌はさらにヒートアップしてしまった。

「朝体温測ったら熱あったしょ?残念だけど、また今度行こう?」

「やだあ!!なつ、きょうがよかったのー-!!!」

泣きながらそう訴えるなつは、熱があるのも相まって顔が真っ赤だ。

息も上がっていて苦しそうだし……

「なつ、一回落ち着こう?今日は苦しいでしょ?また、元気な時のほうがお外も楽しめると思うよ。」

「だって…、なつ、なつ、きょうおそといきたかったあ」

「うん。そうだよね。楽しみにしていたもんね。」

「やだ……、おそといく…、ぜったいおそといくの……」

なつがどれだけ今回の外出を楽しみにしていたかを知っていただけに、こっちとしてもとても心苦しいところがある。

「やだあ…ヒック、おそと……グスッ…」

しゃくりをあげて泣くなつの背中を撫でようと手を伸ばすも、その手はなつによって振り払われてしまう。

「やだ……、でてって……。」

そう言ったなつの声はあまりにも悲痛で、俺は無言で従わざるを得なかった。
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