愛は惜しみなく与う⑥


「黙っていてすみませんでした」


頭を深々て下げる志木さん
別に志木さんは悪くない。杏が言うなって言ってただろうし…
こんな複雑に絡み合った事件…


巻き込みたくないよな


俺が杏の立場なら…きっと人と関わることが怖くなる。自分のことも話せない。
巻き込んで失う辛さを知ってるから


でも杏は…
それでも俺たちと一緒に居たいって思ってくれたんだろ?

だから受け止めるよ



「杏が妹のフリをする理由は?」


声が震えそうになったけど、ちゃんと聞けた。杏に説教かますのは後だ


「杏様は…母親から愛されてない話は、杏様がしましたよね?オブラートに包めないほどに、蘭様…杏様の母親は、杏様を娘として見ていませんでした。存在そのものを…受け入れていなかったと思います。

基本的に長女や長男が後を継ぐんですが、東堂に至っては、杏様が後を継ぐという選択肢は全くありませんでした。

でも杏様は10歳ごろまでずっと、自分が後継者になってもいいように教育を受けて、日々努力していました。


愛されてないと悟りながらも、頑張れば認めてもらえるかもしれない。
そんな淡い期待も子供ながらに持っていたと思います。


でも、無駄でした
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