愛は惜しみなく与う⑥

志木がいなくなるなんて、考えたこと無かったんやで



「無事でよかった。生きててよかった」


そう言ったと共に、涙が溢れてきた
悲しいからじゃない。すごく安心してん。
ホッとした瞬間に、緊張の糸が切れたみたいに。

声が聞けて、あたしの名前を呼んでくれて…



『うん、ただいま、杏。心配かけてごめんな』


お兄ちゃんみたいな、お父さんみたいな温かさで包まれるような感じがする。

自分の悪いところも何もかも受け止めてくれるような、そんな存在。


「アホ、敬語使えよ」

『ふふ。そうでしたね。失礼しました』


電話越しで志木が笑う


あぁ、よかった


志木は大丈夫って言い聞かせてた。正直そうせな、耐えれへんかった。
不安に押しつぶされそうやったから。



「なぁ志木?」

『はい、杏様』

「傷はどう?」

『……動ける程度にはしてもらいました』


そっか。痛いんやな
志木がこんな言い方するのは、そういうことや。


「病院におるん?」

『いいえ?関西に戻りましたよ。でも事情があり直ぐには東堂に戻れません』

「え?もう病院出てええの?」

『動けますので』
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