愛は惜しみなく与う⑥

「…ッ」


自分の目の前を赤い液体が飛ぶ


「い、泉!!」


あたしの力だけじゃ押さえきれなかった。サトルの持っていたナイフは、泉の頬を切った

サトルの腕を掴んだまま、泉の方を振り返れば、サトルは腕を力任せに振り回して、あたしは思いっきり吹っ飛ばされる


痛いな!



「あ、ごめん。傷つけるつもりはないんだ。怪我はしてないか?カッとなってさ…」


怒り狂った目をしていたサトルは、自分であたしをぶん投げときながら、困った顔をしながら膝をつき、あたしの心配をする


なんなん、怖い
感情の起伏、情緒どないなってんねん

サトルの手があたしに伸びてくる



「杏、悪い」


サトルの後ろから泉が手を伸ばし、サトルの肩を掴んで後ろへ放る



「ごめん、ちょっと反応遅れた」

「大丈夫?血が…」

「うん、痛くはない。もう、帰ろうか」


え?


のそのそ立ち上がるサトル


「あと3日。妹の誕生日会まで、あと3日だ。お前の好きな時に仕掛けてこい。お前が仕掛けてこないなら、俺は杏を連れて帰る。東堂が…とか、関係ない。お前と結婚させるくらいなら、俺は杏と逃亡生活でもするよ」
< 225 / 430 >

この作品をシェア

pagetop