愛は惜しみなく与う⑥
「…ッ」
自分の目の前を赤い液体が飛ぶ
「い、泉!!」
あたしの力だけじゃ押さえきれなかった。サトルの持っていたナイフは、泉の頬を切った
サトルの腕を掴んだまま、泉の方を振り返れば、サトルは腕を力任せに振り回して、あたしは思いっきり吹っ飛ばされる
痛いな!
「あ、ごめん。傷つけるつもりはないんだ。怪我はしてないか?カッとなってさ…」
怒り狂った目をしていたサトルは、自分であたしをぶん投げときながら、困った顔をしながら膝をつき、あたしの心配をする
なんなん、怖い
感情の起伏、情緒どないなってんねん
サトルの手があたしに伸びてくる
「杏、悪い」
サトルの後ろから泉が手を伸ばし、サトルの肩を掴んで後ろへ放る
「ごめん、ちょっと反応遅れた」
「大丈夫?血が…」
「うん、痛くはない。もう、帰ろうか」
え?
のそのそ立ち上がるサトル
「あと3日。妹の誕生日会まで、あと3日だ。お前の好きな時に仕掛けてこい。お前が仕掛けてこないなら、俺は杏を連れて帰る。東堂が…とか、関係ない。お前と結婚させるくらいなら、俺は杏と逃亡生活でもするよ」