愛は惜しみなく与う⑥
大きな家の中はシーンとしている。
お母さんに挨拶した方がいいのかとか…いろいろ考えたけど、やめておこう

もういまは、すぐにこの家から出たい



「おかえりですか?」


同じ階に居たメイドさんが話しかけてくる。何も聞かれてないよな?
何回か、壁にぶつかったりガタガタなったけど…


「ええ。急用ができてしまったので、ここで失礼します」


「かしこまりました。外の門を開けておきますね」


気にするそぶりもなく、スタスタと玄関の方へ向かう


よかった



泉は一言も発さない。傷口大丈夫かな
家を出て大きな門を潜る


はぁ

再び息をつく


敷地からでて、車に乗ってすぐ、泉の頬に触れる


「ごめん、怪我さした。これで押さえて」


すぐに手当てしてあげたかったけど、そんなことできる空気でもなくて


「綺麗に切れたから、すぐ治る」

「切れるに綺麗も汚いもない!」


いまだにタラリと血が流れてくる。ガーゼを当てて消毒する。
サトルのことや。なんかナイフに毒とか仕込んでそうちゃう?

それがこわい

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