愛は惜しみなく与う⑥

「杏」

「なに」

「頭打ったろ」

「あたしは大丈夫!尻餅ついただけ」


「指一本触れさせないって言ったのに。ごめんな」


シュンと謝る泉をみて、キョトンとしてしまった。
なにを謝ることがあるんやろうか


泉は…


充分守ってくれたで


泉がサトルに言いたいことを言ってくれたから、あたしは何もせんでよかったんやで?



運転席に座る泉の手を取る




「ありがとう。ほんまに、心強かった」




初めてやで

サトルのことでここまで取り乱さずに居れたのは。
姿を見ただけで過呼吸になってしまったり、息苦しくて身体に力が入らへんかったり…
震えが止まらへんかったり…


少しサトルの話をしただけでもそうなるのにさ。

目の前で、サトルを見て

話しかけられて



それでも冷静を保ってられたのは、泉のおかげなんやで



「イラっとしたから、仕掛けてこいって言ってしまった。準備しなきゃ」


じーっとあたしを見たと泉はそう笑った

あ、やっぱり作戦ではなかったんやな?
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