愛は惜しみなく与う⑥
泉は素直ですね
私なら復讐心が強すぎて、サトルのそんな所を可哀想だなんて1ミリも思いませんけど。
現にこちらは振り回されてきたので。
でも
分かってしまう
『杏は……サトルの痛みが分かってしまう気がする』
泉も、そう思うんですね
『サトルの話を聞いたとき、動揺してた。まぁ普通にサトルが目の前に居るからだろうけど…なんか、うん。そんな感じがした。漠然とですけど』
いや、合ってると思います。
非常に理解し難い事ですけどね。
『あたしと、同じ顔してたって。初めてサトルを見たとき、杏はそう思ったらしい』
はぁ
どうして私は、あの時側に居なかったのか。ずっと側に居れば、杏様とサトルを接触させずに済んだ。
もし接触してても、必ず杏様を見る、異様な視線には気づけたはずなのに…
「杏様は、その時出会った人がサトルだと知って、どんな反応をしていました?」
『…酷く驚いてたよ。整形したってくらい、顔つきが違うって言ってた。でも、杏がバルコニーから飛び降りる写真を、あの角度で撮れるのは、あの場所にいたそいつしか居なくて。それが証拠だと思う』