愛は惜しみなく与う⑥
そ、うですよね

「私たちには、サトルの過去がわからない。
どうやって今の如月財閥に連れてこられたのか。パーティーに参加していたのに、そんな異様な服装、見た目の人が居れば、気づくはずなのに……」


私がそう言うと、覇気のない、寂しそうな声がした



『見えへんねん。普通の人には。孤独で殻に閉じこもってたら、気配さえ……消してしまえるねん』



??杏様?


『杏…』

『志木、サトルがここまでおかしくなったんはあたしのせいや。あの時…もっと喋ったらよかった。中途半端に見つけ出したから……
なぁ、息を殺して、存在を消すことなんて……


あたしも、できてしまうんやで』


そう言った杏様の言葉はとても切なく、胸をえぐられるような感覚に陥る。

どんな顔をしているか分かるから

そんな皮肉なことってあるんですか?


杏様も…孤独を知り、自分の存在を消し、息を殺す方法を知っている。


東堂の家で、何度もそうしてきた杏様
私達以外とは目も合わない。話しかけられもしない。
存在してないみたい、透明人間みたいだと悲しそうに笑っていた杏様


そんな杏様だからこそ


その時、サトルに気づいたと言うんですか?
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