愛は惜しみなく与う⑥

「志木、今はここに杏は居ないのよ?思ってること話せるのはここだけでしょ?思ってることいいな」


美奈子は志木さんの怪我をしてない方の脇腹を小突く。
美奈子の言葉を聞いて、志木さんは、真っ黒の笑顔をこちらに向けてきた



「鈴を思う杏様の気持ちに理解ができません。被害者で鈴にも可哀想な事があったのは事実です。でも、周りの目があるからと、東堂にまた戻ってこれるようにと…そこまで優しくする必要ありますか?

何をしたか、蘭様にも、東堂の使用人にも、東堂組にも……全て伝えるべきです。

それを踏まえて、それでも東堂に戻ってきてもいいというのなら、戻るべきです。無条件で受け入れるなんて甘やかしすぎです。正直100発殴っても気が済みません」


随分ストレスが溜まっていたのか、志木さんが吐き捨てるように話す。


杏は、もし妹が、戻ってきたいと言うなら、何も言わずに受け入れるんだろうな。
杏は優しいからな。相手の立場になって考えて考えて考えて……


相手の思う最善のことをさせてあげるだろう。
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