愛は惜しみなく与う⑥
「悔しい。ここまできたら、もう、俺たちに出来ることは無いんやな」
昴さんはそう言って、近くにいた敦子と美奈子を抱きしめた。
それをみて思った
あぁ、早く
杏と泉に会いたいなって
「朔、慧!大丈夫だった?」
響は涙を浮かべて走ってくる。新も全然涼しい顔をしていない。
そうだよな
大丈夫
「みんなが無事で安心した」
本当に久しぶりに心から安堵した
すぐに警察が敷地に入ってくる
「皆さん、話すのは後で。車に乗ってください」
突然現れた志木さんに指を差されて大きな車に向かって走る。
それぞれが大事そうに、袋を抱きしめて。
見つけた、証拠になりそうなもの達を
車に乗って全員が無言で、ただただ窓の外を見ていた。
警察官が大勢来て、東堂組が捕まえたスコーピオンの奴らを拘束している。
水瀬は…どうなったんだろ
数分だったのか、数時間だったのか分からない。窓の外で動く世界を、黙って見てることしかできなかった。
救急車には何人か乗せられた。その中に信長さんも居た。
でも心配かけないようにか、車の方に向かって、ずっとピースしていた