愛は惜しみなく与う⑥
俺たちは居ても居なくても同じか?

俺は志木さんの気持ちが少しでも楽になるなら。弱音を吐ける場所になれるなら…

そうも、思ってたよ


けど違うのか?


「あんたに何かあれば杏が悲しむだろ。分かってんだろ?志木さんが俺らを守ってくれようとするのと同じくらい、俺らだって……」


志木さんの気持ちも守ってやりたいよ。
でも最後まで言えなかった。

いつも志木さんとはツンケンして話してるだけだからさ。途中で恥ずかしくなかった。

でも、気持ちは伝わった



だって泣きそうな顔をしてるから



「あなたって人は…杏様と同じくらい、アツい人ですね」


志木さんは車を止めて、運転席から降りて、後ろの広くなっている後部座席に回ってきた。



「あの事件以降、杏様以外を守りたいと1ミリも思ったことはありませんでした。他の人がどうなろうと、正直興味さえありません。そのつもりだったんですが……



私は貴方達がすごく大事みたいです」

 

眉を下げて笑う志木さんは、叱られた子供みたいだった。
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