愛は惜しみなく与う⑥
「お嬢様でしたら先ほど、世界記録でも狙えるんじゃないかってくらい、もの凄いスピードで、あちらへ行かれましたわ」


わ、笑ったらダメだ
その光景が目に浮かぶから、ついつい笑いそうになる


「ありがとう」


お礼を言って言われた方に走ったが、ありがとうって何だよな。敬語が使えない。困ったもんだ


言われた方には、何やら小さい…って言っても大きいけど、この敷地にある建物にしては、小さめの建物があった。

杏が走っていった方は、この建物しかないけど。


ゆっくりドアを開ければ、中には畑が広がっていた。

温室ビニールハウス的な?

ちゃんと太陽の光が入るように、天井は吹き抜け。

外観を損ねないようにってか?


中に入っても杏はいない。
おかしいな

広くないこの空間は、畑があるだけで遮るものも何もないのに。


ここじゃなかったのか

そう思って出ようと入口に手を伸ばすと



地面が揺れた



地震!?



……え?


地震じゃない。俺の立ってる所だけ揺れてる。

パッとその場から離れれば、さっきまで立っていた所から、杏が出てきた。
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