愛は惜しみなく与う⑥
目の前で手をバタバタさせて説明する杏と、同じ高さに目線を持っていき、その目を見る。

俺は人生で初めて、人にしっかり、考えてる事を伝えてるつもりなんだけどな。


「な!なんでそんなに見るん!」

「話してるんだから目ぐらい見るだろ」

「近い!」

グイっと顎に手を当てて、顔を押しどけられる。
うん、相変わらず力強いな。


「もう!からかって遊んでるやろ!」

「からかう?俺が?」


そんなつもりは無いんだけどな。人をからかったり…苦手な方だと思うけど


「あたしがテンパるの見て楽しんでるやろ!」


ギッと睨んでくる杏
まぁその顔も可愛いんだけどさ。
ほっぺたが、破裂しそうなくらい膨らんでいて、触りたい衝動に駆られるけど、そうしたら怒られそうだから辞めておく。

でもそうだな


「テンパるのは確かに…面白いかも?」

「アホ!それをからかってるって言うんや!」

「痛っ」


完璧に気を抜いていた腹にパンチを喰らう
り、理不尽だ…


「意地悪な感じで面白がってる訳では無いのに。コロコロ表情が変わるから、可愛いなって見えるだ…いて!!」


再び同じ箇所にパンチされる
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