愛は惜しみなく与う⑥

「これは、薔薇の皆。あたし髪長いやろ？これは高校の入学式かな…みんながあたしの入学式の時にアホみたいに体育館乗り込んできたりしてさ…」


嬉しそうに目を細めて笑う
そこに映る杏は髪が長くて、そして制服に何故かデッキブラシを担いでる。

うん、なんで入学式でデッキブラシかついでんだ？


「ここにある写真はさ、半年前までは部屋に飾っててん。でもさ…あたしおらんことになってるからさ、部屋が掃除されたんよ」


それで志木が全部移動させてくれた。
そう言って教えてくれた。


「この上の畑な、志木が野菜作ってんねん。おもろいやろ？趣味やねんてさ。その下に倉庫で使ってたところ貸してくれた。東堂の敷地に許可なく穴掘って地下室作るの、志木くらいやで」


志木さんならやりかねない……


「ここなら、あたしの想い出、誰にも汚されへんからさ。みんなと出会ってから、みんなの写真もここに貼っててん」


それをニコニコ話す杏を見ていると胸が苦しくなった。どんな思いでここに来たのか。

元気が出る

自分の家なのに、誰も知らない場所で、自分の思い出が褪せないように…
自分の存在を確認するようにここに来ているんだな