愛は惜しみなく与う⑥
……苦しいな


「サトルのこと、可哀想って思ったか?」


ブンブンと下を向いたまま杏は首を振る


すごく杏が小さく見えるよ


「良いんだよ。可哀想って思っても、自分と似てるなって思う所があっても良いんだよ」


そう思わないで欲しいけど、そう思ってしまうのは仕方ない事だろうから。
きっと、同じ想いや苦しみを知ってるからこそ、わかる感情だと思うから。


「誰もそう思っても責めないから。でも、杏が悪い訳でもないし、杏が自分の気持ちを押し殺す必要はないんだよ。スッキリするから、何でも吐き出して」


杏の気持ちは大事にしたいから

そっと手に触れると、俯いていた顔をあげた。


はは。やっぱり可愛いな


「可哀想って思った。気持ちが分かって、一瞬復讐とかそういう気持ちが薄れた」


「…うん」


杏の両手をそっと取る


「分かってるねん。あたしが悪い訳じゃない事も分かってる。でももしあの時…気づけたら…って思う。サトルは自分と同じようなあたしを見つけたんや。やのにあたしは…」


そうだな〜
それに関しては正直俺にはよくわからないけど…
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