愛は惜しみなく与う⑥
その後も薔薇の時の話を聞いた

どれもぶっ飛んだ話で面白いから、俺も楽しく聞いてたんだけど、本来の目的は何だっけ?とわからなくなった。


「なぁ、杏」

「ん?どうしたん?」

「俺、なんで杏を追いかけてきたんだっけ?」


楽しくお喋りしてるけど、こんな感じで話すために来たわけではない。
えっと…


「ほんまやなぁ?泉なんで追いかけてきたんやろ?」


えっと?志木さんと電話してて……
あぁ、そうか。杏が泣いていないか心配で追いかけてきたんだった。


「まぁ、もう少しゆっくりしていいか」

「ん?あたしはええけど」

「何かあったら志木さんから連絡くるだろ。杏を追いかけるって言ってから、随分経ったけど、大丈夫だよな?」


俺、電話折り返すって言ったっけな?
自分の記憶力に不安になる。


「連絡してるかもな」

「ん?」


「ここ、圏外やからさ、電話きてても多分気づかへんで?」


……はぁ
忘れてた。ここ地下室か。
居心地良すぎて地下なの忘れてたよ


「携帯確認したいからあがっていい?」

「うん、勿論。トイレ行きたいし」
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