愛は惜しみなく与う⑥
あたしの腕の中で窒息死しそうな朔に声をかける


「ば、ば、ばか!よせ!力加減」


ギブギブとあたしの腕をトントンと叩く朔
ちょっと顔が赤くなってきたから手を緩める。


目の前に朔の顔

手を緩めたのにもっと赤くなる


「顔赤くない?」

「し、しばくぞ!」

「な!!なんでよ!」


心配してんのにしばくは、理不尽!!

朔にゲンコツを落とそうと思ったが、背中にピトリと何かがくっつく


「杏…俺心配したぞ?本当に怖かったんだから。もう一人でどっかいくなよ」


響があたしの背中にくっつき、腰に手を回してきた

あぁ
ごめんな

不安にさせたよな


「ほんと、私の身にもなってくださいよ」

「杏ちゃんも無事で良かった」


新…慧…


きっと、あたしのことみんな知ってるはずや。妹のフリしてたのも…あたしが、死んだことになってたのも…

やのに


みんな優しすぎるやろ
なんでなん



「げ!!!!また男が増えてる!!しかも!!杏にへばりついて!!!」


この現状を知らなかったのか、奥から出てきた雄作さんは、あたしをみてクラリとする。

そんな雄作さんを志木が支えた
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