愛は惜しみなく与う⑥
喧嘩じゃ…ないねん


「そっか。場所は分かるんだな?なら話は早い」


あたしの手をパッと離して、少し見慣れてしまったスーツのジャケットを脱ぎ捨てた


え?


「なんで脱ぐの」

「動きにくいから」


機動性…いま関係あるん?

ふざけてるのかと泉の顔を見たけど、何も言えなかった。

なんでそんな…悲しそうな顔してるん?


「何回言っても分からないみたいだから、凄くシンプルな話にしよう。頭で考えるよりも、杏は身体を動かした方が早いだろう」


「な、にゆうてんの?」


目の前の泉はジャケットを脱いだ後、シャツの袖のボタンを外して、片腕ずつ袖をまくる。

ちょっと…



「…泉?」


「いいから、構えろ。俺も本気だからな。手は抜かない。だから杏も本気出せ」


言ってる意味が分からへん
手は抜かない?本気出せ?


「1人で行きたいなら、俺に勝ってから行け」


その言葉と共に、泉から拳が飛んできた



ビックリして寸前の所で避けたけど

泉は拳のスピードを緩めることはなかった


その顔は本気やった
< 370 / 430 >

この作品をシェア

pagetop