愛は惜しみなく与う⑥
「なんで泉と…喧嘩せなあかんの」

「杏が今からしようとしてることは、ここに居る全員と喧嘩して、1人で行動することと一緒だよ」


胸が苦しい
わかってるよ

でも…


「下向くなよ。本気だって言ったろ?何のためにここまできたと思ってるんだ。最後まで一緒に居るって言ったのに。1人で行かせるくらいなら、ここで杏に勝って、俺らが行く」


「ちがう!!それは違うやん!そんなんして欲しくない」

「俺らだって1人で行って欲しくないって言ってるのに、行こうとするだろ?俺らだってそんなのして欲しくない」


「ーーッ!!」


飛んでくる拳を掌で受け止めるが、かなり痛い

ジンジンと掌が熱くなる



「避けて受けるだけじゃ、俺に勝てないのは分かってるだろ?それとも俺は……杏の目には弱く写ってるのか?」


今にも泣きそうな顔をする泉 
違うよ




「弱いのはあたしや」



今出せる力を全部込めて

泉があたしに向けて構えた掌に

拳を打ち込む



でも泉はその場から一歩も動かなかった



「杏は弱くていいんだよ」


女の子なんだから。守らせてよ
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