愛は惜しみなく与う⑥
しつこいな

言わへん!!!って言おうと思ったら、分かったのか、口を大きな手で塞がれる。


フガフガ言うあたしを、笑顔で見つめる泉


あれ、

泉ってこんなSっぽかったっけ?あたしにいつも優しいから、こんな泉知らん!!!


「無理矢理言わせるぞ?」

「んーんーん!」

あ、口塞いでるから話せないのか。そうぼそっと呟いた後に、あたしの口は泉の手から解放された。

目一杯息を吸う

ちょっと鼻も押さえられてたしな?



「杏…言えよ」

「言ったら来るやん」

「だから、ついて欲しくなけりゃ、俺に勝てばいいって言ったろ?でも杏は、やらなかった」


はぁ
泉って、こんなに頑固やったっけ
あたしよりも、粘り強いやん。頑固やん。

やれやれ

誰も気づかへんのに

異変に気づいてくれるんやもんな


本気で思ってくれてるもんな



「根負けやなぁ」

「あ、まじ?よかった」


あんまり杏に怒り慣れないから、そろそろしんどかったと笑った


全然怒ってないと思うけど。
それでも優しさは感じたから
< 374 / 430 >

この作品をシェア

pagetop