愛は惜しみなく与う⑥
この目の異変に気づいたんは、鈴が殺されたと思ったあの時と、そして、今や


日頃は忘れるくらいや

でもあたしも繊細なんかストレスには敏感なんか…

今あたしの左目は、視界が欠けてる


失明とかせんよな?
はぁ

とりあえず…明日で終わらせるんやから。自分のことはその後でいい。


左側からの…突然の攻撃には気をつけなあかん。
全然見えへんし、何か動く気配も感じとれへん。不便やな。寝たらマシにるかな



「杏、とりあえず今日は寝ろ。サトルに会って疲れたろ。俺も執事用に渡された携帯が鳴り止まない。母親が…騒ぐ前に」


そうやった
あたし一応、サトルの家に遊びに行ってることになってるんやった。


「志木はどうする?戻る?」

「いえ、辞めておきます。蘭様に色々頼まれては動けませんので」


泉、頼みますね


志木は泉にそう言ってあたしを部屋から出した。

もう少し話していたかったけど、一応ちゃんと鈴のフリもせなあかんから…一旦は屋敷の方に戻るか


「杏、飯はしっかり食えよ。寝る準備したら少し待ってて」


必ず行くから


泉はそう言った




なのに、その日の夜



泉はあたしの部屋に来なかった



-----
< 381 / 430 >

この作品をシェア

pagetop