愛は惜しみなく与う⑥
それでいい
少しでも時間が稼げるなら充分だ


「間取り図は頭に入りましたか?」


志木さんがパソコンに映し出した、診療所の間取り図

そこにバツ印がついている



その印が、あの日

杏がサトルを刺した場所


杏を苦しめる場所



「いくぞ。極力守る。いつも通りお前らの背中は俺が預かる。でもいつもより、集中しろ」


それだけ伝えると4人とも力強く首を縦に振った。


今不安は無くなったよ


お前らのそんな顔みたの、初めてだな



「大きな車を出します」


志木さんはそう言っていつもと違う車の鍵を持ち、ポケットから取り出した薬を飲み込んだ。



「これで、3時間くらいは持ちます。行きますよ」


志木さんに無理をさせるのは嫌だったけど、志木さんはこの瞬間のためにこの薬を助國さんに処方してもらっていた。


まってて


必ず勝ってくるから


勝手な事してごめんな



嘘ついてごめんな



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