愛は惜しみなく与う⑥
雄作さんの合図と共にみんなが動く

さっきビクッとした奴らが穴や


方向を変えて穴になりそうな所へ走り出そうとしたその時


パンッ!!!!!

と乾いた音が鳴った


え、なに?


音の方を振り返れば、東堂組の家の屋根に


人の影が



「チッ、あらてか?」

雄作さんは全員の動きを止めて屋根の上を見た



全員が戸惑う中

あたしが1番戸惑ってたと思う


驚きすぎて息をするのを忘れてた


誰だ誰だと騒ぐみんなの声も入ってこない



月明かりで逆光になり、はっきりと見えないけど


あたしは知ってる


「な、んで……」


声が震えた

影になって見えないけど、そこにいる人は、ニヤリと笑ったように見えた



「久しぶりに暴れるぞ?」



聴き慣れた懐かしい声



「顔こわいこわい!おじさん、女の子を大勢で囲ったらアカンねんで?」



可愛いその声も知ってる



「アホ面でこっち見てないで、暴れなさい」



少しバカにしたような話し方も知ってる



「「「総長助けるで!!」」」


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