愛は惜しみなく与う⑥
1番多くの相手をしたのに、泉は涼しげな顔をしている。一発も貰ってないんだろうな


「私が診ましょう」

志木さんはしゃがみ込んで慧の足首を触った。

倒れていた男が、慧の足首を掴んでこかそうとしたらしい。
本当地獄絵図だよ、ここは


「軽い捻挫ですね。テーピング巻きましょう。座ってもらっていいですか?」

「あ、お願いします」


丁寧に手早く慧の足にテーピングを巻く志木さん。手際の良さは、杏とよく似ている。


「志木のにいちゃん、お医者さんなのか?」

「いいえ。医学を学んでいるだけです。杏様が怪我だらけで帰ってくるので…少しでもと思い勉強しました」

なるほどな
杏も自分が怪我ばっかりしてるから、手当ては上手くなったと言っていた。

志木さんは…杏のために勉強できるんだな。

すげーな

俺は勉強はできないや


「うわ、すっごい!全然痛くない」


ブンブンと足を振る慧。どうやら志木さんの手当は完璧らしい。


「軸足ですか?」

「いや、違いますよ!」

なら問題ないと思います。涼しげな顔をして、どこから取り出したのか分からないけど、テーピングをポケットにしまう。
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